今は複数のデジタルメディアで編集長をしていて、自分の原稿を書く時間はめっきり減ってしまいました。オフィスにいると常に誰かと話すことになるから、執筆は決まって真夜中の自宅です。重い腰を上げるコツは、書こうとしているフォーマットに近い他人のテキストを読むこと。エッセイの依頼ならエッセイ、書評原稿なら書評を読むという感じです。とくに昭和を生きた文豪たちのものは、奮い立たされます。仕事柄、膨大な情報に触れている分、情報ではなく「作品」も主体的にインプットしています。そうしないと、自分自身がつらくなっちゃうので。
僕は、物欲が本くらいしかないんです。といっても、初版本や古典籍をあつめるタイプの蒐集家ではぜんぜんないんですけど。ほしい本であれば、古本で多少値が張っても買ってしまいます。うちはお小遣いにシビアな家庭だったんですが、かわりに本だけは欲しいものを与えられて。子どもの頃からひたすら本屋に通っていました。今も昔も変わらない習慣です。
電子書籍と紙の本は、明確に使い分けていますね。主に、ビジネス書、新書、話題書などの、「作品」というより「情報」として認識している本はすべてKindleです。あとは巻数の多い漫画かな。最近は、50巻くらい出ている、みなもと太郎さんの『風雲児たち』をKindleで読んでいます。幕末を描くために関ヶ原の時代からはじめるっていう壮大な話で、すごくおもしろいですよ。