短歌との出会いは、本当にたまたま。高校で入った文芸部の先輩に「短歌甲子園※1に出てみない?」と誘われたのがきっかけです。短歌は基本的に「だいたい三十一音であればいい」というくらいの決まりしかないのですが、それでいて奥が深く、だんだんと惹かれていきました。でも、本当の意味で短歌と「出会った」のは、大学に入ってから。笹井宏之さんの歌集『えーえんとくちから』を読んで、衝撃を受けたんです。たとえば、 “「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい” のような一首。「短歌ってこんなこともできるんだ!」と感じて、よりのめり込んでいきました。
笹井さんの歌の魅力のひとつは、言葉遣いがとてもやわらかいこと。言葉に無理をさせていなくて、流れがすっと通っている。それなのに、読んでいて頭がくらくらするほどの詩的強度や広がりがある。そのギャップに魅了されました。「自分でもこんな短歌をつくりたい」と思ったんです。ちょうど全国的に学生短歌会が盛り上がっていた時期でしたが、東北近辺にはそういう場所がなかった。そこで「ないなら、自分がはじめよう」と、東北大学短歌会を立ち上げました。
※1 岩手県盛岡市が主催する「全国高校生短歌大会」の通称。